狭小住宅の間取りは、工夫しだいで狭さを感じさせない快適な空間に!
首都圏や地方都市の一等地で見かける、細くて縦長な「狭小住宅」。
狭いながらも、立地のよい利便性の高い場所に建てられることや、土地の形状によっては価格がリーズナブルなこともあり、またその分の費用を建物に当てられるとあって、夢のマイホームを手に入れやすいと人気が高まっています。
しかし、狭小住宅というだけに土地の広さは約15坪ほど。
土地が狭いので、しっかりとした間取りをイメージしないで設計を進めてしまうと、生活動線が悪くなり、暮らしにくい住まいになってしまうことも……。
今回は、そんな狭小住宅を検討している人に、狭さを感じさせない間取りや、狭小住宅を選ぶ際の注意点など、狭小住宅のポイントを詳しく紹介します。
都心に小さな夢のマイホームが持てる「狭小住宅」
約15坪ほどの狭い土地に建てられる住宅、狭小住宅。
首都圏だけではなく、大阪や京都、名古屋といったの地方都市でも狭小住宅を住まいにする人が増えています。
狭い土地に建てられる狭小住宅には明確な定義はありませんが、多くの場合、約15坪以下の土地に建てられている家を指します。
ですが、15坪の土地に建てられる家といっても、建築基準法で建ぺい率(建蔽率)や容積率の制限があり、実際には建てられる家の面積(建坪)はその半分ほどになってしまったり、高さの制限を受けたりすることも。
建ぺい率は土地の用途に応じて30~80%と決められています。たとえば、15坪の土地の建ぺい率が30%であったとしたら、建坪はなんと4.5坪が限界に……。
1坪はだいたい畳2枚ほどの広さです。ということは、4.5坪は9帖。その広さの中に、リビングや寝室、キッチン、バス、トイレ、収納スペースといった生活に必要なスペースすべてを収めなくてはなりません。
狭小住宅は敷地面積が狭いので、建物を3階建てにするなど上方向の空間を利用するのが一般的ですが、中には容積率の制限で3階建てにできないケースも。
さまざまな制限がある狭小住宅ですが、工夫すれば、空間を有効に利用して快適な住まいにすることもできます。
では、具体的にどのような工夫をしているのでしょうか?
狭小住宅で可能な間取り
こんな狭い土地に家が建てられるの?と思ってしまうような場所でも、さまざまな工夫を凝らした素敵な家が建てられます。
では、どんな場所にどんな間取りの家が建てられるのでしょうか?
延床14坪に2LDK
敷地面積が15坪で、建ぺい率が50%であれば建坪は7.5坪になります。
建坪が7.5坪、延床が14坪の広さでも、2階に洋室2部屋と収納、1階にLDKとバス・トイレの配置が可能です。
洋室2部屋はそれぞれ狭く感じてしまうかもしれませんが、部屋を完全に仕切るのではなく引き戸にし、開け放して広く使えるような工夫をすることができます。広く使いたいとき、プライバシーを保ちたいときといった使い分けが可能です。
延床18坪で2LDK
敷地面積が15坪で、建ぺい率が60%であれば、建坪は9坪になります。2階建てなら延床18坪です。
上の例と比べると4帖分の余裕があるので、個室を広げたり、リビングをもう少し広めにしたりできるでしょう。
敷地面積が10坪で、建ぺい率が60%で3階建てにした場合も、延床面積は18坪で同じになります。
ただし、この場合には、ワンフロアの面積がさらに狭くなり、デッドスペースとなる階段が増えることになるので、延床面積が同じでもより工夫が必要になります。
3階建て4LDKを作った強者も!
建坪10.5坪で、延床27坪の3階建てに、4LDKの間取りを確保した住まいもあります。
1階にはガレージとバス、トイレ、和室。2階に広めのLDKと洋室。3階に5帖と4.5帖の洋室と収納といった間取りです。
それぞれの部屋は狭くなりますが、狭小住宅であっても、4人家族でそれぞれのプライバシーを重視した住まいを叶えることはできるのです。
敷地面積20坪弱でも二世帯住宅が可能
敷地面積が18坪で建ぺい率が60%の土地であれば、建坪は10.8坪までですが、3階建てにできれば30坪強の延床面積の家が建てられます。
1階には親世帯の和室とキッチン、トイレを配置。2階にはLDKとバス、3階に子世帯の寝室と子供部屋とトイレ。
こんな間取りであれば、それぞれにプライベートな部屋を持ちながら、2階のLDKで家族団らんを楽しみたいという二世帯住宅もできますね。
間取りの工夫
快適な狭小住宅の例を見ていると、その共通点が見えてきます。
たとえば、2階にそれぞれの部屋を作り、1階を家族が集まる空間にしているケース。
また、車を所有していて駐車スペースが欠かせないなら、1階は駐車スペースをメインにして、2階をリビングや寝室にし窓から自然光が入りやすい空間にするといった間取りもあります。
狭さを感じさせないためには、空間の区切りを減らすことがポイントで、ワンフロアに1〜2部屋の方が広く快適に使えます。ほかにも、高さを有効活用して、2階や3階にロフトを作ったり、スキップフロアにしたりして空間を利用するといった工夫もあります。
また、狭小住宅では十分な採光を確保することが難しいこともあり、より採光が確保できる2階をリビングにするケースもあります。
ですが、2階のリビングにはメリットも多い反面、階段が狭いと大型の家具や家電の搬入が難しくなることもあり、その場合はクレーンで吊り上げるなど費用が発生することもあるので注意しましょう。
住まいは建てたときだけではなく、ライフスタイルの変化に合わせて対応できる間取りが理想です。たとえば、子ども部屋などは、子どもが成長したら仕切りを付けて個室にするというアイディアは人気です。
最適な間取りは、家族構成やそれぞれのライフスタイルによって異なります。
自分たちがなにを重視したいのか、希望をはっきりさせるのがまず第一歩。快適な狭小住宅を手に入れた人たちは、自分たちにとってなにが譲れない条件なのかをしっかりと意識して、その条件を実現するためにさまざまな工夫をしているのです。
また、家を建てる工務店やメーカーによっても得意とする分野があり、独自のノウハウを持っています。ひとつの会社だけに相談するのではなく、複数社に相談すれば思いもよらない斬新なアイデアが見つかるかもしれません。
10〜20坪の土地であっても、工夫しだいで快適で住みやすい家が建てられるのです。
狭小住宅の注意すべき点は?
狭小住宅は狭い敷地を有効利用して建てることができますが、注意すべき点もあるので確認しておきましょう。
隣家との距離が近い
特に利便性の高い地域に建てる狭小住宅は、両側の家との間が場合によっては10〜20cmほどしか離れていないこともあり、さまざまなトラブルが起こりやすくなります。
「生活音がお互い聞こえてしまう」「窓も距離が近いので室内が見えてしまい視線が気になる」などの問題が起こりやすいので、プライバシーを守る工夫が必要です。しっかりと防音対策をしないと騒音トラブルになることも。
せっかく念願のマイホームを手に入れたのに、隣家とのトラブルで引越しせざるを得ないというケースも実際にあるのです。
また両隣が高さのある建物だと採光が難しく、風通しも悪くなってしまうことも。暗くジメジメした環境になりやすいのも、狭小住宅のデメリットです。
事前に、家を建てた後の生活もしっかりとイメージして設計することが大切です。
間取りに工夫が必要
狭小住宅ではワンフロアの面積が狭いため、部屋を区切りすぎると生活動線の悪い住まいになってしまいます。
敷地の関係で、細長い土地に細長い建物を建てるケースもあります。このような形状だと面積は同じだったとしても、細長い生活スペースのために間取りや家具・家電の配置によっては、生活しにくい住まいになりがちです。
生活動線の悪さは通気性の悪さにもつながり、換気だけではなく、部屋ごとに温度差が生まれてしまうといったことも。
生活動線も考慮して、部屋の間取りを工夫することで、狭さを克服する工夫が必要になります。
安定性や耐久性の問題
狭小住宅では容積率などの制限範囲で、敷地を有効利用して居住面積を広くするために3階建てにすることが一般的です。
また、敷地の形状から細長い作りになることも多く、3階建ての細長い建物は安定性や耐久性に問題が生じやすくなります。しっかりと構造計算を行い、耐震性の基準を満たす必要があります。
建て替えが困難
狭小住宅では、狭い敷地で工事を行わなくてはなりません。
そのため資材の搬入や足場を組むにあたって近隣トラブルになりやすく、建て替えやリフォームがしにくいといった面もあります。
坪単価が割高
狭小住宅では土地の面積が狭いので、土地の費用や固定資産税が安く抑えられるというメリットがあります。そのメリットのおかげで、単価の高い地域に家を建てられるというのもあります。
ですが、空間を有効に使うためにさまざまに工夫を凝らすなど手間がかかること、狭い土地での資材の搬入や工事などに人件費が余分にかかるなど、追加で費用が発生します。
このような理由から、狭小住宅では1坪当たりの費用が割高になることに注意しておきましょう。
スペースを有効活用しよう
狭小住宅の建築においては、スペースの有効活用が大きなポイントとなります。
デッドスペースをうまく活用して収納スペースを確保するなど、設計や建築の工夫をご紹介します。
空間の有効活用が効果的
容積率などの制限の範囲内であれば、まず建物の高さを有効に利用することができます。
3階建てにしたり、中二階やロフトのスペースを作ったり、空間をうまく使えば狭さを感じない住まいになります。中二階とは、1階と2階など階数の中間にフロアを作ることで、スキップフロアとも呼ばれます。
スキップフロアは、階段で段差が付いたフロアをひとつながりの空間として利用し、水平方向の狭さをフロアを斜め方向でつなげて解消することで、空間の開放感を出す、という人気の設計です。
デッドスペースの有効活用で収納スペースを
狭小住宅であっても、利用できるスペースは意外に多いものです。
- 屋根との間にできたスペースを利用した小屋裏収納
- 壁に設置した壁面収納。
- キッチンやダイニングの床下収納
- 階段下スペースに洗濯機置き場を設置
- 階段下に収納スペース
3階建てが多い狭小住宅では、階段下もしっかり活用するなど、デッドスペースになりやすい場所を収納空間に活用しましょう。
地下室という選択肢
利用できるスペースを増やすために地下室を作るという方法もありますが、地下室はコストが嵩むことに注意しましょう。
狭小住宅は敷地が狭いことから重機が使えなかったり、資材を置く場所が建築場所から離れてしまうなどから、一般住宅よりも坪単価は高くなります。
地下室の建築では、地下室という地上の建築とは異なる工事が入り、さらに坪単価が高くなるので総額でかかる費用を事前にきちんと相談して把握しておきましょう。
狭さを感じさせない工夫
中庭となる空間を作りフロアを吹き抜けのようにするなど、空間をなるべく仕切らないで広い空間を演出するのもよいでしょう。
部屋の仕切りをアクリルなどにし、視界を遮らないようにして広く見せる方法もあります。
扉は引き戸にすれば、開け放って広く利用することも、閉めてプライベートな空間にすることもできます。
狭い空間を最大限利用するポイントは、用途を固定するのではなくその時々に応じた使い方ができるように、ひとつの空間をフレキシブルに利用できるように工夫することです。
狭小住宅を検討しているなら「スマートモデューロ」もおすすめ!
狭い敷地を有効利用するために、狭小住宅を検討している人も多いことでしょう。
狭小住宅にはたくさんの魅力がありますが、もうひとつの選択肢としておすすめしたいのが「スマートモデューロ」です。
スマートモデューロってなに?
スマートモデューロ(以下、スマモ)とは、一言で言えば「動かせる家」です。
動く家というと、トレーラーハウスなどを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、スマモは、基礎工事をして土地に定着して使用する定住用の建物です。
運びやすいようにコンテナと同じサイズで作り、完成した建物を工場から現地まで輸送して設置します。
設置したあとでも、建物を取り外して別の場所へ運んで再設置できることから、ムービングハウスとも呼ばれています。
運んで移動できることから、シンプルで簡素な建物だと想像した人もいるかもしれませんが、スマモは一般的な住宅以上の耐久性をもったれっきとした居住用の住まい。100年を超える耐久性が、実験で証明されています。
スマートモデューロには6mと12mの2サイズがあるほか、3mサイズの「モデューロ」というタイプも。それぞれのサイズを組み合わせることで広さや間取りをカスタマイズすることもできます。
もちろんキッチンなどの水回りの設備を付けることもでき、条件しだいですが2階建てにすることも!
6mや12mのサイズであれば居住用にもなりますし、6帖ほどの3mサイズを庭の空いているスペースに設置して離れとして使うこともできます。
スマモの魅力
スマモは工場で製造した完成品を運ぶことから、工事期間が短く、費用も安く抑えられるという特徴があります。
狭小住宅の建築では、足場を組むスペースの確保さえ難しいこともありますが、スマモであれば運んで設置なので、足場を組むなといった作業や費用も発生しません。
そんなスマモの最大の特徴は、枠からすべて高級木材を使用していること。
窓、床、壁、細部にいたるまでこだわり、高気密で高断熱のしっかりとした作りの家は、快適な空間だけではなく光熱費の節約にもなります。
しかもスマもは購入だけではなく、レンタルでの利用もできます。レンタル費用は3mサイズで月22,000円〜なので、まずはレンタルで試してみるのもありではないでしょうか?
狭小住宅との比較
スマモと狭小住宅を比較すると、それぞれにメリットやデメリットがあります。
狭小住宅ではどうしても設計費用や施工費が割高になるので、部材や品質に多少の妥協をしてしまうこともあるでしょう。
また、隣家との距離が近いため生活音が漏れやすくプライバシーが守りにくいなど、音の問題が住み始めてから深刻になることが多々あります。
スマモであれば、高級木材を使った丈夫な作りで、楽器の演奏もできる高い防音性能を持っており、狭小地でも音の問題に頭を悩ませる心配はないでしょう。
狭小地での工事の難しさや、建て替えが困難であるという狭小住宅の弱点もスマモなら対応できます。老後は静かな土地で引越したいという希望も、移動できる住まいスマモなら大丈夫。
人生の長い年月にわたって暮らす住まいそのものが、ライフスタイルの変化にあわせて柔軟に対応できるというのは大きなメリットではないでしょうか?
一方で、敷地によっては一般の狭小住宅の方が効率的な場合もあるでしょう。それぞれのメリットやデメリットをしっかりと検討して、納得のいく住まいを手に入れてください。
狭小住宅の間取りは工夫しだい
狭小住宅はパターンが決まっていて制限が多そう……と思っていた人も多いかもしれませんが、実は、狭小住宅であっても工夫しだいで快適に暮らすことができ、狭さを感じないほどゆったりと過ごすことができるのです。
とはいえ、しっかりと確認し検討しないと、生活動線の悪い間取りになってしまった……とあとあと気づくことがあるのも確かです。工務店や専門業者にきちんと相談して、後悔のない暮らしやすい間取りにしましょう。
工夫しだいで自分好みで暮らしやすく、家族みんなにとって住み心地の良い家が実現するはずです!