狭小住宅のメリットやデメリットは?事例とともにご紹介!

都心で一戸建の暮らしって、とっても憧れますよね。

でも、都心部は土地代だけでも多額の費用がかかってしまい、なかなか厳しい……と思い悩む人も多いのではないでしょうか。

たしかに、地方で家を建てるよりも費用面のハードルが高く、憧れで終わってしまいがちに……。

ですが、そんな憧れを叶えられるかもしれない「狭小住宅」を知っていますか?

狭小住宅は、一見すると「本当にここに住めるの?」と目を疑いたくなるような狭くて小さな土地に建てられた住宅です。

狭く小さい土地であっても、狭さを感じさせないように工夫することで、快適な生活空間にすることも!そして、費用を抑えることができるのが狭小住宅なのです。

「狭小住宅ってどんな建物なの?」「選んで後悔しない?」。そんな疑問も解消できるように、狭小住宅のメリットやデメリット、そして間取りの事例などを紹介します。

狭小住宅ってなに?

狭小住宅とは、文字通り「狭くて小さな土地に建てられた住宅」のことです。明確な定義はありませんが、おおむね「15坪以下・50㎡以下の土地に建てられた住宅」を指します。

狭小住宅が生まれた経緯を見ていくと、戦後にさかのぼります。

住宅資材の不足から、政府は昭和21年に「住宅臨時建築制限令」で床面積が50㎡を超える住居の建築を禁止しました。そこで、狭小住宅へのニーズが高まり、多くの建築家が名作を世に出すことになります。

代表的なものには、池辺 陽「立体最小限住宅」(1950)、増沢 洵「最小限住宅」(1952)、東 孝光「塔の家」(1966)などが挙げられます。

現在の狭小住宅には、以下のように、いたるところに部屋を広く見せる工夫が施されています。

  • 延べ床面積を確保するために、3階建てにしたり、地下室や屋上を作ったりする
  • 壁を透明なアクリルなどにして、奥行きを感じさせる
  • 大きな窓で採光し、開放感がある雰囲気にする
  • 風通しや明るさを採り入れるため、中庭を作る
  • デッドスペースを有効に使い、収納スペースを確保する

中には、4坪の土地に約3坪の狭小住宅を建てたという事例もあります!

狭小住宅のメリットやデメリット

ここからは、狭小住宅のメリットやデメリットについて見ていきましょう。

狭小住宅のメリット

① 都心の利便性の高い場所にマイホームが建てられる

建てるための土地の面積が小さいので、都心部であっても候補地の選択肢が増え、希望する場所に建てられる可能性が高くなります。駅や商業施設に近い場所であれば、通勤・通学にも便利で、時間を有効に使えるでしょう。

利便性のよい地域は土地の価格が高くなりますが、狭小住宅なら広い土地を購入する必要がないので、相対的に土地の費用も抑えられます。

都心の利便性がよい場所で生活したいという人に、狭小住宅はおすすめです。

② 税金が抑えられる

所有する住まいには、固定資産税や都市計画税がかかります。

税金の基準となる土地の評価額は、土地面積が広くなるほど高くなるため、土地が狭い狭小住宅であれば納税額が安くなります。また、不動産登記にかかる登録免許税も、同様に土地の評価額が基準なので一般の住居に比べれば支払う金額が少なくて済みます。

③ 日々のランニングコストが抑えられる

光熱費が抑えられることも狭小住宅のメリットです。狭い空間なので、冷暖房が効きやすく、快適な暮らしができます。大きな窓にすれば狭小住宅でも光が採り込みやすく、日中は明るく照明も必要ありません。

また、交通の便がよい都市部では車を使わない生活も可能です。車を持たなければ、維持費や駐車場代、ガソリン代、自動車税などの負担が無くなります。

④ 3階建て以上の住宅は災害に強い構造になっている

狭小住宅でよく見られる3階建て。3階建ての住宅は、建築基準法で厳しいチェック項目が設けられています。

建築基準法では、3階建て以上の建物について「構造計算」を義務づけています。構造計算とは、建物が地震や災害に耐えられるかを数値化したものです。

また、火事などの際に救助隊が入れるように3階の道路側の窓の大きさが決まっているほか、スムーズに避難できるように、1階と2階、2階と3階のそれぞれの階段は近い場所に配置するなど細かな規定を満たす必要があります。

こういった、厳しい規制をクリアしているので安心して住むことができますね。

狭小住宅のデメリット

① 建設費が高くなることも

狭小住宅では土地の費用は安くなりますが、一方で、建築費が割高になりやすいというデメリットがあります。

土地が狭いために重機などが入るスペースがとれなかったり、足場が組みにくかったりすると、工事での手作業が多くなってしまい人件費が高くなりがちです。

特に地下室を作るときには、その傾向が顕著になるので注意してください。

② 生活動線が複雑になりやすい

狭小住宅は、居住スペースを増やすため3階建てなど縦長の空間になります。階が分かれ垂直移動が多くなるため、生活動線が複雑になりやすいのです。

洗濯機と洗濯物を干す場所を同じ階にする、寝室と浴室を近くに配置するなど、生活動線を考えてレイアウトを工夫する必要があります。

③ 隣の住宅との距離が近い

狭小住宅は都市部の密集した場所に建てられることも多く、隣の住宅とはどうしても距離が近くなってしまいます。

隣の音が聞こえたり、またこちらの音も隣に聞こえやすかったりと問題が発生しがちです。防音効果の高い壁を使うなど、防音対策の費用が発生することも頭に置いておかなければなりません。

また、お互いが見えやすくなるので、窓の位置にも気を付ける必要があります。

狭小住宅にかかる税金が安いってほんと?

メリットにも挙げましたが、狭小住宅は税金が抑えられます。

ここでは固定資産税と都市計画税に注目してみましょう。固定資産税は、土地や家屋の所有者にかかる地方税です。都市計画税は、整備を進めている市街化区域内の土地や家屋の所有者にかかる地方税です。

どちらも1月1日現在の課税標準が基準になり、毎年払う義務があります。なお、固定資産税、都市計画税ともに「小規模住宅用地の特例」があります。

特例では、住宅の敷地となっている面積200㎡以下部分の土地は、固定資産税が「6分の1の課税標準」、都市計画税が「3分の1の課税標準」になります。狭小住宅はこの200㎡以下に該当するため、一般の住宅に比べて税額が安くなります。

狭小住宅の価格はどれくらい?

狭小住宅は15坪・50㎡以下の土地に建てられた住宅を指します。国土交通省の調査によると、延床面積50㎡の注文住宅の平均建築費用は1,200〜1,300万円とされています。

狭小住宅の建物本体の費用は、都内や地方であってもそれほど大きな価格差はありません。設備や間取り、どこまで自分のこだわりを実現するかなどにもよりますが、平均より多めに見積もって2,000万円ほどあればよさそうですね。

しかし、建物本体以外にかかる費用もあります。たとえば、外構、庭、門、水道管やガスの工事費など費用です。

また、狭小住宅では、敷地によっては足場が組みにくく作業日数や作業工程が増えて、余分に費用がかかることがあります。土地に建築資材を置くスペースがなければ資材を置く場所を借りる費用や運搬費などがかかる場合も。

必要になる費用の総額は、状況によってさまざまです。事前にしっかりと確認しましょう。

狭小住宅を選ぶなら!失敗しないためのポイント

重要事項をまとめたノート

狭小住宅を建てる際に、確認すべきポイントを紹介します。

予算に、狭小住宅だから発生する費用を見込んでいるか?

狭小住宅は隣家との距離が狭く、通常の足場が入らないこともあります。そのため業者に「狭小用の足場」を組むための費用が別にかかるかどうか、確認が必要です。

また、3階建ての場合には、2階建てよりも重量があるので、地盤の調査や杭打ちなど土地の改良費用も必要になるかも知れません。

さらに、前段で挙げた資材置き場の費用や運搬費用など、狭小住宅であることから発生する費用に注意して予算を組む必要があります。

隣のお家事情は?

狭い敷地の狭小住宅は、隣家の影響を受けやすくなります。せっかく建てた念願の住居に長く住むためにも、隣家とのトラブルは避けたいですよね。

もっとも気になるとされるのが音の問題。

音が漏れないように遮音に優れてた壁材や、二重の窓サッシ、厚手のカーテンを使うといったことが考えられるでしょう。

また、隣家に面した窓の大きさを小さくする、屋根や外壁に防音塗料を使用するといった対策で、外からの音を抑えることもできます。

駐車場はどうする?

車がある生活がしたいなら、駐車スペースの確保が必要になります。

住宅の1階部分を駐車場にするビルトインガレージと、駐車場を借りるという選択肢があります。ビルトインガレージなら雨の日も濡れずに済み、荷物があっても楽ちんです。

一方で、1階部分はガレージが占めるので、住居スペースが狭くななってしまいます。

外部に駐車場を借りれば、1階部分が広く使えますが、駐車場代が発生し、家と駐車場の移動が大変になります。

日当たりについて

土地をめいっぱい利用して建てる狭小住宅は隣家に囲まれやすく、日当たりが悪くなりがち。

光が入りにくいので日常的に暗い室内……湿気やカビが発生する状況になってしまうとかなりのストレスです。

そうならないように、壁側から光が入らない場合は天井窓を付ける、隣家からのプライバシーが気になるなら目線より高い位置に窓を付けるといった工夫が必要です。

業者と相談して換気や採光手段も考えておきましょう。

どんな間取りがあるの?間取り事例を紹介

狭小住宅は具体的にどのような間取りがあるのでしょうか。事例を4つ紹介します。

事例①「北側採光の狭小住宅」

① 基本データ

  • 工法構造:木造(SE構法) 3階建
  • 建築面積:27.7m2 / 8.4坪
  • 延べ床面積:78.2m2 / 23.7坪

② 間取りや特徴

株式会社ホープスによる、東京都江東区に建てられた8.4坪の狭小住宅です。

「北側のやさしい光を最大限活かしたい」という要望に応え採用したという吹抜け北側採光。狭小住宅ながらも大きな吹抜けや、間仕切りのないワンルームといった間取りが特徴です。

1階には玄関を兼ねた土間スペース。2階にLDK。リビングは、ダイニングの床と45cmの段差を設け、この部分が椅子代わりになるというアイデア!3階は吹抜けと寝室になっています。

明るい居住空間になるように開口部の位置や大きさを工夫して、住居全体として光と風が通るようにデザインにしたそうです。

参考:株式会社ホープス 施工事例

事例②「16.5坪の敷地で叶えた、ビルトインガレージのある狭小住宅」

① 基本データ

  • 工法:軸組工法(在来工法)
  • 敷地面積:54.55㎡ / 16.50坪
  • 延べ床面積:96.29㎡ / 29.13坪

② 間取りや特徴

こちらは株式会社BLISSによる、都内の江東区に建てられた16.5坪の狭小住宅です。

1階は車とバイクが収まるビルトインガレージになっています。ブラックとホワイトを基調にし、バルコニーを道路と反対の面に設置することで、生活を感じさせない、スタイリッシュな外観に仕上がっています。

2階には約14帖のLDK、3階には2つの洋室(将来的に仕切りで3つの洋室にできるようになっています)、さらにロフトもあり収納も豊富です。キッチン背後の収納に洗濯機を設置して家事がしやすい配置するなど、家事動線の工夫がポイントになっています。

参考:株式会社BLISS 施工事例

事例③「15坪・木造+RC造の3階建て住宅」

① 基本データ

  • 工法:木造+RC造(1階)
  • 建築面積:45.5m² / 13.7坪
  • 延べ床面積:86.85m² / 26.3坪

② 間取りや特徴

株式会社T&Wによる、建築面積13.7坪の狭小住宅は、2階全面に広がるガラス張りの外観が強い印象となっています。

1階には駐車場、寝室と浴室。2階はダイニングキッチンとリビング、さらに5.9帖のデッキテラスがあり、開放感のある間取りになっています。3階は子ども部屋と寝室で、収納スペースも充実しています。

2階のリビングに大きな開口部を設け、天井高のある空間にすることで、光や風を同時に取り込めるように配慮されているとのこと。開放的に暮らすための工夫がいっぱいの住まいですね。

参考:株式会社T&W 施工事例

事例④「中庭・吹抜けで明るいリビングに 細長い敷地の狭小住宅」

① 基本データ

  • 工法構造:木造(SE構法)、3階建て
  • 建築面積:43.29m2 / 13.07坪
  • 延べ床面積:77.71m2 / 23.47坪

② 間取りや特徴

こちらも株式会社ホープスによる、東京都世田谷区に建てられた13.07坪の狭小住宅です。

間口4m、奥行が14mと細長い狭小住宅で、敷地が南北に細長いことからリビングやダイニングの配置、採光をどうするかが課題だったとのこと。

2階のバルコニーを建物の中央付近に配置し、バルコニーにつながるリビングを吹き抜けにすることでその課題を解決。建物全体に光が行き渡り、開放感のある建物となっています。

吹き抜けに沿ったロフト部分には細長いカウンターを設置。子どもの勉強スペースや、仕事スペース、家事のスペースなどに活用することで、細長い敷地を活かした間取りとなっています。

参考:株式会社ホープス 施工事例

狭小住宅なら「スマートモデューロ」もおすすめ!

「スマートモデューロ」というこれまでにない新しい住宅を知っていますか。

スマートモデューロ(以下、スマモ)は木造のムービングハウスです。狭小住宅を考えている人にはぴったりの商品なので、ぜひ、選択肢のひとつにしてみてはどうでしょうか。

スマモには、3m(10㎡)タイプの「モデューロ」と、6m(15㎡)と12m(30㎡)タイプの「スマートモデューロ」の2種3サイズがあり、狭い敷地にも設置が可能です。

形状がコンテナハウスと似ているため混同されやすいですが、コンテナハウスとはまったくの別物。ユニットを連結して広くしたり、条件にもよりますが2階建てにすることもでき、一般の住宅のように暮らすことができます。

木造軸組み工法で作られたスマモは、内装はもちろん、フレームまで木材で作られています。

木造だと強度が心配という声あるでしょう。ですが、スマモは100年もつ伝統建築の技法で、耐震性に加え断熱性・機密性・遮音性にも優れている住宅なのです。

スマモには、「完成した建物を運んで設置するので、工事期間が短く、費用も抑えられる」「現場で足場を組むなどの必要がないので、別途かかる費用も抑えられる」といったメリットもあります。

サイズが3タイプあるので、土地に合わせて選ぶことも可能ですね。

いきなり購入は……と迷う人には、スマモはレンタルで利用することもできます。3mタイプで月22,000円からなので、まずは木の香りがする癒しの空間を試してみてはいかがでしょうか。

狭小住宅で夢の戸建を叶えられるかも!

ここまで狭小住宅のメリットやデメリット、費用、失敗しないためのポイントなどを説明してきました。

狭小住宅はこんな人におすすめです。

  • 都心に戸建を持ちたい人
  • 勤務地や駅から近い利便性が高い場所に住みたい人
  • 機能性が高いコンパクトな住宅に住みたい人

狭い土地でも工夫を凝らすことで快適な暮らしができます。家を建てる際は、狭小住宅もぜひ検討してみてください!