楽器・用途別で異なる防音室の選び方【ご近所トラブルを回避しよう】
「家でも気兼ねなく楽器を演奏したいけど、ご近所トラブルになりそうで心配」
コロナの影響により、音楽室やカラオケルームのように”密”とされるような個室への制限がかかるようになってからというもの、ますます楽器を演奏しにくい世の中になりました。
自宅で音を出してもご近所への迷惑を考えるとなかなか演奏ができない・・・そのような悩みを抱える人も多いのではないでしょうか。
”防音対策”を考えてみても思いつくのは、ドアや窓の隙間を埋めたり、防音シートを貼る。といった簡易的なものばかり。
では、いっそ防音室を自宅に作ってみるのはいかがでしょうか。
防音室にはグレードがあり、楽器や用途に合わないものを選ぶと、音が大きく漏れてしまうことがあるため、慎重に選ぶ必要があります。
安心して楽器演奏をできるように、楽器・用途別に防音室の種類や値段を見ていきましょう。
そもそも“防音”って何?
防音とは、外への音漏れや外からの騒音などを防いだり、音の反響や振動を減らしたりすることです。
音漏れや騒音を防ぐことを”遮音”といい、音の反響や振動を減らすことを”吸音”といいます。
つまり、どれだけ遮音だけをしても、室内に音が反響してしまっては音が正確に聞こえにくくなってしまいますし、吸音だけをしても音漏れしてしまう環境であれば音が外に出てしまうのです。
”遮音”と”吸音”この両方の対策ができて初めて防音と言えるのです。
防音室といっても実はさまざま!
防音室であれば、どれでも良いというわけではありません。どういう音を防ぎたいかによって防音室の種類やグレードが変わってきます。
一口に楽器といってもピアノやフルート、ギターなど様々。音の大きさも響き方も同じではありません。
さらに、楽器の大きさや使用人数によって選ぶ広さも変わってきます。
一室まるごと防音仕様にするタイプだけではなく、部屋の一部を防音室として作ることも可能なので、まずはどれくらいの広さが必要なのか考えていきましょう。
どのくらいの広さが必要?防音室の大きさ
複数人で演奏をしたい場合、音量や響き方が楽器によって異なるため、どんな音も防音できるように一室まるごと防音室にすることをオススメします。
個人で練習をするだけなら2〜3畳ほどの広さでも十分練習が可能です。
2畳以上の広さが必要になるのは電子ピアノなどで、グランドピアノであれば3畳くらいが最低限必要になる広さです。
また、グランドピアノは防音室を組み立てる時点で入れなければ、入らない可能性もありますので注意が必要です。
どれくらいの防音性能があれば良いの?
音の大きさを表す単位として”dB=デシベル”という単位が使われます。この数値が大きいほど、騒音と感じるようになるのです。
一般的な話し声の場合、およそ50〜60dB。隣の部屋に聞こえることはあっても、隣の建物の人には聞こえることはほとんどありません。
楽器の音が、一般的な話し声と同じくらいの大きさならば、隣人に迷惑をかける可能性も減少します。
また、防音室がどれだけ音を遮断できるかは“Dr=ディーアール”という値で表せます。
防音室の中の音が100dBで、防音室の性能がDr40の場合、防音室外で聞こえる音は100dB-Dr40=60dBとなります。Dr値が高ければ高いほど、音を防音できているということになります。
- ピアノ
電子ピアノなら約90dB、Dr35~が目安になってきます。グランドピアノは100㏈くらいで、Dr40~から検討していきましょう。
- フルートやクラリネットなど高めの音の管楽器
高い音は防音しやすいです。したがって、音の大きさとしては90㏈くらいですが、Dr35~が必要です。
- テナーサックスやバリトンサックスなど低い音の管楽器
これらの楽器は音が低くて防音しにくく、音自体が100dBと大きいのでDr40~50以上くらいを見ていくのが良いでしょう。
- トランペット
およそ110dBの音の大きさでありますが、中高音なのでDr35~でも防音できます。
- ヴァイオリン
高音域なので比較的防音がしやすいです。音の大きさは100dBほどでDr35~が良いとされます。
- チェロやコントラバス
音の大きさは100dB前後ですが、音が低いのでDr40~が推奨されます。
- アコースティックギター
80㏈くらいですが、音が低いためDr35~の防音性能が求められてきます。
- エレキギター・エレキベース、ドラム
これらの楽器は単体でも120㏈くらいの音が出るので、ブース型防音室よりも在来防音工事の方でないと防音ができない可能性があります。
カワイが出しているDr50の防音室もありますが、家自体の防音がしっかりしていないと難しいかもしれません。このDr50の防音室はエレキギター用の他に、他の楽器を夜に弾きたいときにもオススメです。
家の中に作る以外にも、防音室を手に入れる選択肢はある
これまでは、防音室の広さや求められる防音性能、その値段について見ていきました。
しかし、家の中にはスペースがなくて置けない方もいると思います。
家の中以外にも、外に庭があれば防音仕様の小屋を設置するという方法もあります。
防音仕様の小屋を使用することで、一番音が聞こえやすい家の中の家族にも迷惑が掛からずストレスフリーになれます。
さらに、自分好みの空間にカスタマイズしやすい点から人気が高まっています。
一方で、小屋を建てるにはそれなりの費用と手間がかかってきます。
小屋を作るのには防音室を家に設けるよりも費用がかかり、防音仕様となると製品によってはさらに費用がかさみます。
防音室で失敗したくない! 注意するべき3つの事項
一度購入をすると、なかなか手軽に防音室を変更できない点で悩む人も多いのではないでしょうか。
防音室の性能だけではなく、他にも検討をしなくてはならない3つの注意点も忘れてはいけません。
①家の壁の防音効果はそれぞれ違う
「今、住んでいる家は前の家よりも外の声がよく聞こえる気がする。壁が薄いのかな」
「隣の家は小さな子供が庭でよく遊んでいるのに、遊び声がほとんど聞こえない」
など、引っ越した先で聞こえ方に違いを感じることはありませんか。
家の壁の素材によって防音効果もさまざまです。
したがって、防音室に必要なDr値が、家によって異なってきます。
場合によっては防音室のDr値が推奨よりも高いものを選ばなければならないこともあります。
②自治体によっては時間ごとに騒音レベルを制限していることも。
環境確保条例などを制定し、日中と夜間で規制基準を制定している自治体もあります。
せっかく防音室を作っても、防音しきれずdB数を超え条例違反となってしまった。ということのないように家のDr値をよく調べておく必要があります。
閑静な住宅街なのか、大通りに面した人も車も行き来の多い土地なのかなど、住んでいる環境によっても外からの聞こえ方が変わってきますので、周りの環境も見る必要があります。
③防音室は1階に設置がオススメ
防音室は300kg弱から、重たいもので1t近い場合があります。
鉄筋コンクリート製の家ですと問題はありませんが、木造住宅の場合、1階であれば設置可能なケースもあります。
床の強度不足を補強工事で対応する場合もありますが、木造2階以上になると建物の構造上、防音室が設置できない場合が多いと言われています。
そのため、1階に設置することをオススメします。
自分の用途にあった防音室を選んで、自由に楽器を弾こう
それぞれの楽器に合った防音室や注意点について、いかがでしたか。
自分だけの防音室を作って、いつでものびのびと安心して演奏できる音楽ライフを楽しんでみてください!