快適な「仮設事務所」を作るには? 最新事情と改善方法

建設現場の人手不足が深刻な昨今。その原因として労働環境の厳しさ、いわゆる3K(きつい、危険、汚い)が挙げられています。この3Kを解消する対策の1つとして、今注目されているのが、作業員の休憩場所でもある「仮設事務所」の環境改善です。

今、お使いの現場の事務所は作業員にとって快適ですか?夏は猛暑、冬は酷寒の中で仕事をした作業員が昼食や休憩を取る仮設事務所もきつい(暑い、寒い)、汚いでは、労働意欲が高まりません。間接的に作業の安全に関わる可能性すらあります。

この記事では、仮設事務所の改善を考えている方に、最新の仮設事務所事情をご紹介します。ぜひ参考にしてください。

現場作業員の憩いの場「仮設事務所」

工事現場や建設現場に設置される仮設事務所は、現場監督・事務員のデスクワークや作業員の休憩のためになくてはならない設備です。会議室として使用されたり、道具や資材の保管場所として利用されることもあります。

仮設事務所の建物はプレハブが主に使われますが、「仮設なのだから」という意識から、一般住宅ほどの設備がなく、快適性もあまり顧慮されていないのが実際です。

冷暖房も十分ではないことが多く、夏は暑く冬は寒いなど、デスク作業にも休憩にも向かない環境になりがちでしょう。

最近の仮設事務所事情

汗を拭く作業員

現場作業は炎天下の酷暑、吹きさらしの極寒、また高所、土埃などにさらされる過酷な労働です。

したがって、現場作業員にとって、休憩に使う仮設事務所が快適なのは、まさに「天国」を感じさせます。

逆に、休憩時間を過ごす仮設事務所の環境が満足な状態でなけれは、がっかりです。リフレッシュできず、結局「休憩にならない」こともあります。

「作業現場あるある」に多いのが休憩やトイレについての喜びや不満

ネット上には作業現場によくある光景をユーモアを交えて描いた「現場あるある」の記事や投稿が数多くあります。

その中の1つの「職人なら絶対に納得する『建築現場あるある』50連発」を読んでみると、50の内の多くが休憩やトイレに関するものでした。


「あるある」に交じる喜怒哀楽を読むと、作業現場での休憩やトイレの環境がいかに大事かがわかりますね。

戸建ての建築現場など、仮設事務所がない場合も

一番きついのは、そもそも仮設事務所がない場合です。

戸建ての建築現場など、敷地面積が狭い現場では仮設事務所を設置することができず、仮設トイレのみの場合があります。

仮設事務所がない現場では、車の中で昼食の弁当を食べたり、食後の休憩や仮眠を取る風景がよく見られます。作業員が、外でお弁当を食べている光景を見かけたことはないでしょうか。

狭い車の中ではゆったり体を休めることができず、本当に大変。苦労が耐えないといえるでしょう。

仮設事務所に多く使われるプレハブやユニットハウスとは

仮説事務所として、多くの場合プレハブやユニットハウスが活用されます。

プレハブは柱、外壁、屋根などの部材を工場で作り、現場で組み立てるのに対して、ユニットハウスは組み立てまで工場で行ない、ほぼ完成した建物をユニック車(クレーン付きのトラック)で現場に搬送します。

どちらも安く、短い工期で設置でき、一定のクオリティを担保できるのが特長です。更に、それぞれのメリット・デメリットをみていきましょう。

プレハブのメリットとデメリット

プレハブによる仮設事務所のメリットは、ユニットハウスに比べ間取りの自由度が高いこと。使用目的によって大きさや形状などをある程度選ぶことができます。

デメリットは、現地で組み立て工事が必要なので、ユニットハウスよりも工期がかかること(7~10日程度、長ければ1~2ヶ月)。価格面でも、一定の品質・性能を確保しているので、それに見合った価格となり、極端に安価な製品はありません。

ユニットハウスのメリットとデメリット

ユニットハウスのメリットは、ほぼ完成した建物が現場に搬入されるので工期が1日程度で済むことです。また、必要に応じてユニットを追加・撤去できるので増築・減築も簡単にできます。

デメリットは、前述の通り間取りの自由度が低いことです。

また、ユニック車で運搬するので1つのユニットの大きさに限界があり、一続きの広い部屋を作ることはできません。現場周辺の道路事情によっては、ユニック車が入れないなどで、ユニットハウスを搬入できない場合もあります。

進化する仮設事務所

スーパーハウスの外観

プレハブやユニットハウスの仮設事務所というと、一昔前までは屋根や壁の断熱・遮音などは一切顧慮されない「仮小屋」のイメージでした。

しかし、これらは一般住宅にも使用されるようになって、居住性の高い素材やデザインが開発され、ニーズに応じてより満足度の高い仮設事務所を作れるようになりました。現場の終了後は、そのまま、あるいは移設されて一般の事務所や店舗などに利用されることもあるといいます。

メーカーの「ナガワ」では、このような1ランク上のユニットハウスを「スーパーハウス」というブランドで販売しています。

ナガワのスーパーハウスは、欧米でキャンプなどに使われるトレーラーハウスからヒントを得たもので、十分な居住性を持っているのが特長。もちろん、2連結、3連結とつなげることでスペースも確保できます。

このように、最近ではより快適な仮設事務所を実現するプレハブやユニットハウスが登場しています。

プレハブとユニットハウスの価格相場

仮設事務所に使用されるプレハブとユニットハウスの価格相場を見てみましょう。

プレハブの価格相場

プレハブの価格は、現場での組み立て費用込みで坪単価40~50万円前後が相場です。そこから、壁や床の素材などのグレードを上げるともちろん価格も高くなります。

プレハブは建屋の費用の他に、電気工事費(10~15万円)、給排水工事費(2~10万円)がかかります。

 ユニットハウスの価格相場

ユニットハウスは新棟の他に中古棟も流通しています。

ユニットハウスは連結できるので、例えば9坪の仮設事務所の価格は、3坪タイプの価格×3で計算できます。

メーカー3社の新棟と中古棟の価格例を以下の表にまとめましたので参考にしてください。

メーカー 2坪/新棟 2坪/中古 3坪/新棟 3坪/中古
ユニットハウスジャパン 445,400円   - 644,500円   -
ナガワ 520,000円 381,000円 850,000円   -
オーディーテック 572,000円 268,000円 84,1000円 338,000円

※価格は税込み、ライター調べ。最新情報とは異なる場合がございます。詳しくは、各社公式HPをご参照ください。

レンタルも可能な仮設事務所

ユニック車で搬入・撤去が可能なユニットハウスは、必要な期間だけレンタルすることもできます。

大きさは1坪タイプから5坪タイプまでさまざまあり、連結も可能。また、レンタル物件は、換気扇、蛍光灯、漏電ブレーカーなどの付属品がついているものが多く、ウォシュレットトイレ付のものもあります。

レンタル提供会社には、松本運送建設レンタル.comRENTSPACE CREATEなどがあります。

レンタル料金は公表していない会社がほとんどですが、SPACE CREATEでは次のようなレンタル例を公表しています。

1ヶ月のレンタル費用例(SPACE CREATE)

レンタル会社 2坪タイプ 3坪タイプ 7.5坪タイプ
SPACE CREATE 16,500~26,400円 19,800~29,700円 46,200~56,750円

※価格は税込み、ライター調べ。最新情報とは異なる場合がございます。詳しくは、各社公式HPをご参照ください。

最近の仮設事務所はこんなに快適!事例紹介

仮設事務所と言っても、工事の規模によっては半年、1年と使用することも珍しくありません。

長期間使用する場合は、事務員にはもちろん、そこで休憩を取る作業員にとっても重要な作業環境の1つとなります。

人手不足、働き方改革を反映して仮設事務所も快適化の流れ

現場作業員の人手不足が深刻になる昨今、建設会社は3Kと嫌われる現場作業の労働環境改善に取り組んでいます。

建設会社にとって仮設事務所の居住性を高めることは、作業員の休憩の質を上げ、人手確保や現場の安全確保、作業効率のアップにもつながります。

このような時代の流れの中で、作業員が休憩を取る仮設事務所も、居住性、快適性への志向が高まっています。

【事例】 三協フロンテアの「SOHOスタイル」と「LOUVER」

三協フロンテアは、居住性とデザイン性を高めたユニットハウスの「SOHOスタイル」と「LOUVER」を販売しています。

「SOHOスタイル」は、大きなFIX窓とウッドデッキが印象的なデザインで、建物側面は波型スチールパネル仕様。床はタイルカーペット仕上げになっています。

「LOUVER」は、木の質感のルーバーパネル(目隠しパネル)が特徴のスタイリッシュなユニットハウスです。両開きドアと、大きなFIX窓で開放感のあるデザインになっています。

【事例】ナガワの「NeosyS」

ナガワは、ユニットハウスの特性はそのままに活かし、高級感のあるデザインに仕立てた「NeosyS(ネオシス)」を販売しています。

1ユニット4坪で、3連、4連と接続が可能。トイレ、キッチンなどをセミオーダーでカスタマイズすることができます。

高級感溢れるデザインで、居住性を高めた設計になっています。

 仮設事務所の新提案!居住性が圧倒的に高い「スマートモデューロ」

仮設事務所の居住性、快適性への意識やニーズが高まる時代に、筆者が注目したのは木造のムービングハウス「スマートモデューロ」です。

製造・販売をするのは奈良県吉野郡で古くから木材を扱っている「吉銘」という会社で、集成材の分野では日本のパイオニアとして有名です(※「集成材」とは切り分けた木材を接着剤で組み合わせた木材で、堅牢で汎用性が高いことから、大手ハウスメーカーでも活用されています)。

ムービングハウスと聞くと、自宅の庭にある「男の隠れ家」や「別荘」のイメージを持ちますが、これを現場の仮設事務所に使うという発想もアリではないかと思います。もし、現場に木造の休憩所があるとしたら「現場あるある」の塩体験も劇的に改善される気がしますよね。

スマートモデューロとは

スマートモデューロ(以下、スマモ)について、もう少しご紹介していきましょう。

スマモは、木造軸組み工法で作られた、文字通り「動かせる家」。内装はもちろん、柱や梁も木材で作られています。

木材には、強固で美しい天然木の集成材を使用し、「100年使える木造建築」を実現。窓、床、壁、細部にまでこだわっているため、一般住宅に引けを取らない性能と住み心地が魅力です。

1ユニットのサイズは、6mタイプと12mタイプ、3mタイプのコンパクトな「モデューロ」があります。一定の条件はあるものの、横方向や縦方向(2階建て)に連結することで、必要なスペースを確保することができるのもうれしいポイントです。

 スマモの特徴とメリット

スマモには、次のような特徴・メリットがあります。

  1. 高級木材の集成材を使用しているので、一般住宅に劣らないデザイン性・居住性があり、木に囲まれた温かみのある空間を休憩所として利用できる。
  2. 建築基準法を満たす十分な耐震性がある。
  3. 断熱性、遮音性に優れている。
  4. 次の現場でも再利用できる木造建築物ならではの耐久性、耐用年数があり、100年使うことも可能。
  5. 完成品を運ぶので、設置や撤去が簡単。

スマモはレンタルも可能

購入価格は、3mタイプ(10㎡ ) 2,750,000円~、6mタイプ(15㎡)3,960,000円~ 、12mタイプ(30㎡)6,600,000円~と、一般的なプレハブよりかなり高価です。しかし「100年使用可能」を考慮すると、次の現場、また次の現場と使っていくことで、結果として悪くないコストパフォーマンスになる可能性は大いにあるでしょう。

また、レンタルもできるので、使用期間が短く、予算に限りがある場合でも利用可能です。レンタル料金は、3mタイプ(10㎡ )22,000円/月~、6mタイプ(15㎡) 39,000円~、12mタイプ(30㎡) 66,000円~とリーズナブル。

人手不足が年々深刻化する中で、働き方改革も進んでいます。「スマモ」の仮設事務所は、まさに建設現場の環境改善における「斬新な一手」として、作業員に歓迎されること間違いなしではないでしょうか。

快適な仮設事務所で、人手不足や3K改善をしよう

人口減少やコロナ禍でますます建設現場も厳しい状況に追い込まれるなか、過酷な環境を強いてしまうのは企業にとっても、作業員にとってもメリットはありません。

作業員が快適に、長く一緒に働いてくれるよう、まずはこの仮設事務所を見直してみてはいかがでしょうか。そのうえで、今回紹介した事例やサービスをぜひ参考にしてみてください。

ご紹介した建物それぞれに魅力がたくさんあり、迷ってしまうこともあると思います。ともに働く仲間達の声に耳を傾けながら、ぜひ、皆さんにぴったりの仮設事務所を見つけてください。