10坪の土地に建てる狭小住宅のメリット・デメリット総まとめ
生活をするのにとても便利な都市部での暮らし。
電車やバスなどの交通網が発達しているので通勤や通学の利便性も良く、人口も多いのでスーパーや医療機関などが徒歩圏内に充実しているのも大きな魅力です。
通勤にかかる時間が短縮されれば、自分のための時間や、家族で一緒に過ごす時間をより長く持つことができるでしょう。
とはいえ、都市部は郊外と比べると物件の価格が高く、賃貸住宅の家賃が郊外の倍以上ということも珍しくありません。
そこでおすすめなのが「小さな土地を買って家を建てる」という選択肢。
都市部は土地がとても高い上に、すでに多くの建物が密集していて、空いている土地がないと思われがちですが、実はビルやマンションなどを建てるには狭すぎる土地や、変形した土地などは、都市部であっても比較的安い価格で販売されていることがあります。
使い道がないような狭い土地に家を建てることができるの?
無理して建てたところで日当たりが悪かったり、窮屈な生活だったりするのはイヤ!
そんな不安の声が聞こえてきそうですが、ご安心ください!
狭小住宅(きょうしょうじゅうたく)とも呼ばれる15坪以下(50㎡以下)の土地に建てる家は、地価の高騰が続く都市部での暮らしを叶える選択肢のひとつとして、近年とても注目されているのです。
今回の記事では、狭小住宅のなかでもさらに狭い10坪の家に注目し、そのメリットやデメリット、実際の間取り、快適な住まいを実現するためのコツなどを紹介していきます。
そもそも10坪の土地の広さってどれくらい?
10坪の土地。
文字を見ただけでは、実際にどのくらいの広さなのか想像しにくいですよね。
土地の広さは「○○坪」や「○○平米(㎡)」と表されるのが一般的です。1坪は約3.3平米なので、10坪の土地は約33平米になります。
ちなみに、33平米という広さは、畳の枚数で表すとだいたい20畳ほど。
日本では公立の小中学校の教室の広さが、平均すると65平米ほどなので、約20坪(33平米)は、単純にその半分ほどの広さをイメージすると分かりやすいのではないでしょうか。
10坪の土地に建つ家の広さは?
狭い土地に家を建てるなら、土地全体を目一杯に使って、少しでも家を広くしたいと思う人も多いのではないでしょうか。
ですが、ここで気を付けなくてはいけないのが「10坪の土地に10坪の家を建てることはできない」ということ。
土地と建物にはさまざまな法規制があり、その土地に建築可能な建物の高さや広さも法律によって決められています。
土地を探していると、ついつい土地の広さや形状、立地条件や価格ばかりに気を取られてしまいがちですが、まずは土地と建物の法規制について正しく理解しておくことが大切です。
ここからは、狭小住宅を建てるにあたって知っておくべき土地と建物に関する主な法規制を見ていきましょう。
用途地域
土地に建築可能な建物の種類や広さ、高さにもっとも大きく影響するのが、都市計画法によって定められた「用途地域」という規制です。
たとえば、ひとつの街の中に病院や商業施設、学校、住宅など異なる種類の建物が無秩序に乱立していると、さまざまな面で不便が生じるだけでなく、景観も損なわれてしまいます。
そこで用途地域の規制によって、用途の似た建物を同じ場所に集約することで住みやすい街づくりを目指すというわけです。
用途地域は大きく「住居系」「商業系」「工業系」の3種類に分類され、さらに住居系を8つ、商業系を2つ、工業系を3つと細かく分けています。
住宅を建てることができるのは、工業系の「工業専用地域」を除いた用途地域です。ただし、商業系の用途地域は繁華街であったりするので、落ち着いて住むにはあまり向いていないことも多いです。
購入を検討している土地がどの用途地域に分類されているのかは、役所の都市計画課や建築課で閲覧や購入ができる「都市計画図」で確認することができ、Webサイトで見られる自治体もあります。
建ぺい率(建蔽率)
「建ぺい率」はその土地の面積である「敷地面積」に対する建物を建てられる割合のことで、用途地域ごとにそれぞれの上限が定められています。
たとえば、住居系の土地ではその地域の環境や景観を守るために、建ぺい率の上限が30%〜60%と低めに定められていますが、商業系では土地を有効活用するために建ぺい率の上限は80%となっています。
なお、工業系で住宅を建てることができる「準工業地域」の建ぺい率の上限は60%ですので、10坪の土地に建てられる家の建築面積は最大で1フロアが19.8平米(33平米×0.6)になります。
容積率
建ぺい率が敷地に対する建築面積の割合を指すのに対し、「容積率」は敷地に対する延べ床面積の割合のことで、50%〜500%の範囲で定められています。
敷地に対して100%を超えるケースがあるのは、建築面積が建物を真上から見たときにどれだけの土地を覆っているかを表したものに対して、延べ床面積は建物のフロアごとの面積を足した合計を指しているからです。
つまり、容積率というのは「何階までの家を建てられるのか?」ということに影響します。
用途地域ごとに容積率の上限は異なるため、土地を探す際には建ぺい率と合わせてチェックが必要です。
狭小住宅のメリット・デメリット
家を建てるということは、人生で何度も経験することではありません。
「家は3回建ててみないと理想の家にはならない」とも言われますが、実際には3回も家を建てるなんて一般的な家庭では考えられないですよね……。
だからこそ、家を建ててから「こんなハズじゃなかった!」と後悔しないように、計画の段階から不安や疑問はしっかりと解消しておくことが大切なのです。
狭小住宅を建てる場合も同じで、あらかじめメリットだけでなくデメリットについてもきちんと把握しておくことは、住み始めてからのギャップを最小限にするためにも欠かせません。
ここでは、狭小住宅のメリットとデメリットについて解説していきます。
メリット
① 土地の選択肢が増える
狭小住宅というのは、別の角度から見ると「その街のデッドスペースを活用した住宅」ということになります。
一般的な広さの住宅を建てるには狭すぎたり、土地の形が変わっていたりするものも多く、普通であれば高すぎて手が出ないような都市部や利便性の高い立地でも、15坪以下であれば意外とたくさん売りに出されています。
つまり、より多くの選択肢から土地を探すことができるわけです。
② 土地代を抑えることができる
15坪以下の狭い土地というのは建てられる建物の種類が限られてしまうため、広い面積で販売されている土地に比べると、一般的には価格が割安になります。
土地代を抑えられる分、外観や内装、エクステリアなど自分がこだわりたいポイントに予算を充てることもできますね。
駅が近い、商業施設が充実しているなど、土地の値段に対して立地条件がよいというのもメリットのひとつでしょう。
③ 税金を抑えることができる
住宅を建てると、固定資産税や都市計画税などが課されます。
一般住宅用地と、住戸一戸あたり200㎡までの小規模住宅用地とでは、これらの課税方式が異なり、小規模住宅用地には税負担を軽減するために、税が減額される特例措置が適用されます。
狭小住宅用の土地であれば、ほとんどのケースでこの小規模住宅用地に該当するため、実際にマイホームが完成した後の税金を抑えることができます。
デメリット
① 建物の建築費用が高くなることも
狭小住宅は、限られた敷地面積の中で少しでも建物の広さを確保するために、2階建てや3階建てにするのが一般的です。
上に高くするということは、その分強度をしっかり確保する必要があり、地震対策や防音性能を高めるために建築コストがかさんでしまうこともあります。
また、土地が狭いことで重機などが入りにくい、足場が設置しにくいといったことから、人件費や建材などを運び込むための運搬費が余分にかかってしまうというデメリットも覚悟しなくてはいけません。
② 生活動線が縦に長くなりがち
建物を上に広げることで、必然的に階段を上り下りする必要が出てきます。
小さな子どもや高齢者のいる家庭では、実際に生活を始めみると思った以上に負担に感じてしまうこともあります。
また、フロアごとの居住スペースも一般的な広さの住宅と比べて狭くなるため、間取りや設計によっては圧迫感を覚える可能性もあるでしょう。
③ 隣接する住宅との距離が近い
狭小住宅用の土地というのは、基本的に周りを建物に囲まれているケースが多く、隣接する住宅や建物との距離がかなり近くなります。
その結果、騒音をはじめ近隣とのトラブルに巻き込まれるリスクも高くなってしまうというわけです。
10坪の土地でも工夫しだいで快適な家が建てられる
狭小住宅は「狭い」「小さい」ということばかりに気が向いてしまいますが、実際には10坪前後の土地であっても快適に過ごせる家が建てられます。
ここからは、狭小住宅を建てるにあたって、心がけたい居心地のよい空間づくりのポイントを詳しく見てきましょう。
土地選び
狭小住宅では、広さを高さでカバーすることが多いため、土地を選ぶ際にはできるだけ容積率の高い土地を選ぶ方が設計の自由度は高くなります。
都市部によっては高さ制限が厳しいところもあるため、3階建てが可能かどうかも事前に必ず確認をしておきましょう。
また、土地の前面は広い道路に面しているのが理想的です。
建築資材を運び込んだり、足場を設置したりする際には大型のトラックや重機が必要になるため、道路が狭いと人件費や余分なコストがかかってしまう可能性があるからです。
さらに土地や道路の広さ以外にも注意したいのが、土地の強度です。
軟弱な地盤の場合には土地改良のためのコストが大きな負担となりますし、居住空間を広げるための地下利用も難しくなってしまいます。
設計や間取りの工夫
狭小住宅の一般的なデメリットは、そのほとんどが設計や間取りの工夫でカバーできます。
たとえば、狭い土地では駐車場を独立して確保することはできませんが、ビルドインガレージにすれば問題は解決です。
快適性に大きく影響する室内の明るさにも、隣接する住宅からの視界を上手に遮りプライバシーを確保しながらも、吹き抜けなどを取り入れることで室内採光を確保できます。
また、天井の高さが1.4m以下で、下の階の半分以下の面積であれば容積率に入れなくてもよいため、ロフトスペースなどを設置して生活空間や収納スペースを確保することもできます。
地盤がしっかりしていて、地下水位の低い土地であれば、地下室などの利用を検討してもいいでしょう。
使える空間を無駄なく使ってデッドスペースを無くし、窮屈さを感じさせない快適な空間を作ることができるのです。
10坪程度の土地に建てられた住宅の事例
ここまで狭小住宅について説明してきましたが、「百聞は一見に如かず」。
狭小住宅というものをより具体的にイメージするために、実際に10坪程度の土地に建てられた住宅を紹介します。
<参考:株式会社ホープス>
サンフランシスコの住宅を彷彿とさせるアメリカンスタイルの狭小住宅は、東京世田谷区の株式会社ホープスが手掛けた一軒。
板を一枚一枚重ね張りして仕上げたラップサイディングの外壁がとてもスタイリッシュです。
<参考:株式会社ホープス>
室内は、リビングの上に吹き抜けを作ることで、狭小住宅のデメリットのひとつでもある暗さをカバー。
差し込む光によって明るさをプラスするだけでなく、実面積以上の広がりを感じることができます。
<参考:株式会社ホープス>
壁を使って上手に収納スペースを増やすのも、狭小住宅で快適に暮らす秘訣のひとつです。
<参考:株式会社ホープス>
2階と3階はあえて壁を設けないことで、広々とした空間を実現。
このように、狭小住宅であっても内装や間取りを工夫することで、明るく開放的な生活空間を叶えることができるのです。
【工法構造】木造SE構法 3階建
【建築面積】6.2坪
【延床面積】16.6坪
狭小住宅を考えているなら「スマートモデューロ」という選択肢も
狭い土地を有効活用して、居心地のよい住まいに仕上げる狭小住宅。
ただ家を建てるのではなく、土地の特徴を最大限に生かして満足度の高い家を建てるのは、難解なパズルを解くようなワクワク感があります。
もちろん、広い敷地に家を建てるのと比べれば課題も多く、家づくりの難易度は高くなります。そのため、狭小住宅を得意とするハウスメーカーや設計事務所に依頼するのが一般的です。
では、それ以外に方法はないのかというと、そんなことはありません。
ここからは、狭小住宅とは趣の異なる「スマートモデューロ」を、狭小住宅に代る選択肢として紹介します!
シンプルで上質な暮らしが叶うスマートモデューロ
スマートモデューロ(以下、スマモ)は、奈良県吉野にある創業70年の老舗建築資材サプライヤー 吉銘が手掛けるムービングハウスです。
ムービングハウスという名の通り、クレーンやトラクターを使って動かすことができる建物です。
スマモは一見するとコンテナのようにも見えますが、実際はフレームから壁、床、天井などの内装に至るまですべてが木造で仕上げられているのがその特徴。
スマモは大きく2タイプに分かれ、
3m(約10㎡)サイズの「モデューロ」
6m(約18㎡)と12m(約30㎡)サイズの「スマートモデューロ」
があり、この2種3サイズを総称して「スマモ」という呼ばれています。
スマモは縦横に連結させて広さや高さ、フロアを増やすことができ、狭い土地で一人暮らし用の住まいにすることもでき、居心地のよい狭小住宅に仕上げることが可能です。
また、スマモは「木造軸組工法」を採用しているため耐震性にも優れ、窓の配置や大きさ、間取りなども比較的自由に設計できます。
内装は「あらわし構造」となっており、柱と柱の部分をあえて剥き出しにしておくことで、その部分を利用して棚を作ったり、収納スペースとして活用したりとデッドスペースも無駄にしません。
なによりも、狭小住宅でありながら自然素材の木材をふんだんに使い、木の香りあふれる快適な住まいを実現することができるのです。
魅力あふれるスマモについて、もっと詳しく知りたい!という人は、スマモの特徴やメリット、費用などを紹介したこちらの記事も合わせてチェックしてみてください。
じっくり考えて、理想の住まいを実現しよう!
みなさんにとって、“理想の暮らし”とはどのようなものでしょうか?
その答えは人によってもさまざまですが、多くの人にとって理想の暮らしを実現するための土台となるのが「住まい」です。
狭小住宅にはさまざまな制限がありますが、それを上回るメリットもたくさんあります。
時間をかけてしっかり悩んで、不安や疑問点をひとつひとつ丁寧に解消し、満足のいく素敵な住まいに仕上げてくださいね。