完全分離型二世帯住宅のメリット・デメリットとは?両親と快適に住みたい人も必見!

「老後のことも考えて親世帯と一緒に暮らしたいけど、プライベートには干渉されたくない……」。このように考えている人も、少なからずいると思います。

家族が多いと大変なこともありますよね。

そんな人におすすめな住宅が「完全分離型二世帯住宅」です。

「生活空間が分離されるので、お互いの生活には干渉し過ぎない。でも会いたいときに会える」。このように、安心と快適な暮らしができる二世帯住宅が、完全分離型二世帯住宅です。

今回は、この完全分離型二世帯住宅のメリットやデメリット、間取り・外観を含めた事例を紹介します。

完全分離型二世帯住宅とは?

完全分離型二世帯住宅とは、親世帯と子世帯が同じ屋根の下に暮らしながらも、お互いの生活空間を分けられる住宅のことです。

分離方法は、横割り分離と縦割り分離の2種類があります。横割りは上下分離、縦割りは左右分離とも呼ばれます。

横割り分離は、2階建て以上の建物を建て、階で世帯を分けます。外階段を付けて、それぞれの玄関を別に設けることで完全分離を実現できます。

ライフステージに合わせて上下階で住み分けられ、親世帯が高齢の場合には階段を上り下りする負担を軽減でき、もしも救急車を呼ばなければいけない事態でも搬送がスムーズにできるなどのメリットがあります。

しかし、遮音対策していないと、上階で子どもたちが走り回る音や、夜間の生活音、入浴の音などが下の階に響いてしまうことも。上階の世帯は音が出ないように気を遣いながら生活しなければならないなど、お互いにストレスに感じてしまう可能性もあります。

縦割り分離は同じく2階建て以上の建物を建て、壁を隔てて左右に世帯を分けます。

横割りと違うのは、それぞれの独立性が高く、生活音への気遣いが軽減できること。両世帯とも1階に玄関があり、世帯人数の多い子世帯のスペースを広めにするなど空間の配分が柔軟にできることもメリットです。

一方で、両世帯に階段や廊下のスペースが必要になるので、その分居室空間は狭くなってしまいます。また、親世帯が高齢になった際には、階段の上り下りが負担になることも考えられます。

分離方法によってメリットやデメリットはありますが、完全分離型二世帯住宅なら、近すぎず遠すぎずな環境でお互いの暮らしに干渉することなく一緒に住むことができ、より快適な暮らしが実現できるでしょう。

完全分離型二世帯住宅のメリット・デメリット

プライバシーもしっかりと確保でき、理想的な完全分離型二世帯住宅。しかし、メリットばかりではなく、残念ながらデメリットもあります。

完全分離型二世帯住宅のメリット

完全分離型二世帯住宅のメリットはなんといっても同じ家に住みながら、プライバシーがしっかりと守られ、お互いが快適に暮らせること。生活空間が完全に分離されるので余計な気遣いやストレスも軽減できるでしょう。

税制面でもメリットがあります。相続税に関して、平成25年に「小規模住宅地の特例」の範囲が拡大され、完全分離型二世帯住宅にも適用される可能性があります。

「小規模住宅地の特例」とは、亡くなった方の自宅や事業を行なっている土地について、条件を満たした親族が相続することで「相続税評価額を最大で8割引」してくれる制度のこと。

特例が適応されなかった場合に、たとえば1億円の土地や建物に3,000万円の相続税がかかったとします。しかし、この特例が適用されれば、600万円に減額されるのです。

「小規模住宅地の特例」は完全分離型二世帯住宅において適用されやすく、優遇措置を受けるためには次の条件を満たす必要があります。

  • 親と子が同じ棟の建物に居住している
  • 名義は親になっており、区分所有登記がされていないまたは建物が未登記
  • 親から無償で借り受けている
  • 被相続人(親)の死亡後、10カ月以内までに相続人(子)が親とともに住んでいる

ほかにも、親が亡くなったり、仕事の都合で引越さなければいけなくなったり、とさまざまな事情でスペースが空いてしまっても、完全分離型二世帯住宅なら空いたスペースを賃貸住宅に転用しやすく、住宅をまるごと貸し出すこともできます。

親世帯と子世帯がより快適に暮らせ、住まなくなっても柔軟に対応できるのが完全分離型二世帯住宅のメリットです。

完全分離型二世帯住宅のデメリット

完全分離型二世帯住宅のデメリットは、キッチンやトイレ、浴室などの設備が2つ以上必要になり建築費用がかかること。この費用がネックとなり、完全分離型をあきらめ、一部を共有して使う人もいます。

また、完全分離型二世帯住宅は2戸分の広さの建物になるため、広い土地が必要になり土地代もかかります。費用の負担がもっとも大きいのが完全分離二世帯住宅です。

完全分離型二世帯住宅とはいっても同じ建物。出かける際に目についたり、壁一枚で分かれているだけなので物音などが気になったりと、プライバシーが完全に守られるわけではありません。すぐに子世帯の住居に行けるため、毎日両親が訪ねてくる可能性もあります。

分けられているとはいえ、お互いに気を遣いながら生活しなければいけないこともあるでしょう。関わりすぎず過ごしたい人にとっては、ストレスに感じてしまうかもしれませんね。

これとは逆に、マンションや賃貸物件の隣人とはあまり関わらないのと同じように、完全に分離されていることで関係が希薄になり、互いの変化に気づかないこともあるかもしれません。定期的に食事する機会を設けるなど、意識的にコミュニケーションを取るようにしましょう。

二世帯住宅の3タイプ

二世帯住宅

二世帯住宅には、紹介した「完全分離型」のほかに、「同居型」「一部共有型」の3つのタイプがあります。それぞれについて解説していきます。

完全分離型

すでに取り上げたように、完全分離型は親世帯と子世帯が同じ建物に住みながらも、玄関や水回り設備などのすべてを分離するパターンです。

上下階で分ける横割り型と、左右で分ける縦割り型があります。お互いのプライバシーをもっとも確保しやすく、困ったことがあればすぐに助け合えるのがメリット。

しかし、建設費用が高くなることや、日常的な交流が生まれにくいなどのデメリットもあります。

同居型

同居型は1つの住宅を親世帯と子世帯で共有するパターンです。

寝室は別々ですが、玄関やリビング、バスルーム、キッチンなどを共有して使用します。すべてを共有にすることで費用を抑えられるケースが多く、一緒に生活することで生活費も抑えられるでしょう。

金銭面でもっともメリットがあるのが同居型になります。

また、大人数で賑やかに暮らせるため、寂しさを感じることも少なくなるはず。

さまざまな事情で1世帯での居住になった場合でも、一般的な住宅とほとんど変わらないため、そのまま住み続けることができます。

一方で、各世帯のプライバシーを確保するのは難しいでしょう。生活時間が異なったり、スタイルや考え方が違ったりするとトラブルの原因になってしまうので、互いに配慮しながら、快適に暮らせるように決まり事やルールを作っていくことが必要です。

すべてを共有するため、世帯別の光熱費や食費などの把握が難しくなることもあり、金銭面でのトラブルにならないように、よく話し合っておきましょう。

ほかにも、家を一から建設する際に、お互いに好みやこだわる部分が違うと、希望通りに進まない場合もあるかもしれません。

同居型は、なにより互いにしっかりとコミュニケーションを取りながら、トラブルがないようにルールを決めたり、配慮したりと思いやりをもって生活するのが大切です。

部分共有型

部分共有型は、玄関などの1部部分は共有しつつ、キッチンやリビング、浴室などは別々にします。完全分離型と同居型の中間に当たるのが、部分共有型です。

近い距離で生活しながらも、主要な生活空間が分かれているので、プライバシーも確保でき、ほどよい距離感を保てるでしょう。完全分離型よりも建築費用が抑えられ、自分たちのスペースもしっかり確保できるので、好きな間取りや設備などを選ぶこともできます。

しかし、部分共有型はどこまで共有するか分離するかによって、大きく生活環境が変わってきます。建築するのにも時間や手間がかかるので、お互いの要望をしっかりと確認して擦り合わせることが大切です。

共有スペースでは顔を合わせる機会もあるので、プライバシーが完全に守られるわけではありません。お互いに配慮しながらルールを守って生活する必要があります。

また、共同型と同じように、部分共有した設備の光熱費などが曖昧になりがちです。どちらがどの程度を負担するのかしっかりと確認しておきましょう。

部分共有型は、完全分離型と同居型の中間にあるため、バランスのよい二世帯住宅ともいえますが、互いに配慮は必要になります。親世帯、子世帯でしっかりと話し合って、快適な住まいを目指しましょう。

完全分離型二世帯住宅の施工例

ここでは、完全分離型二世帯住宅の施工例を紹介します。具体的な建物を知ることで、自分たちの家のイメージも膨らむのではないでしょうか?

親世帯は平屋に、子世帯は2階建てで快適に

無垢の木と自然素材の家づくり、株式会社カツマタより。

親世帯は平屋に、人数の多い子世帯は2階建てにして分けた完全分離型二世帯住宅です。無垢材をふんだんに取り入れた住まいは、温かみがあり落ち着いた雰囲気。

外観はシンプルながらも、玄関脇の化粧柱やウリンで作ったウッドデッキやバルコニーがいいアクセントになっています。

子世帯の玄関は広々。ベビーカーもそのまま置くことができ、玄関側に設置された手洗いでウィルスを家に持ち込む心配も軽減できます。

床はサクラ、床天井は紙クロス、下駄箱は杉でできており、帰宅して玄関を入れば常に木の香りがただようほっとできる雰囲気です。

古い家の電気照明の傘を再利用するなど、おしゃれな演出も。

キッチンなどの水回りは上下階の同じ場所に設置し、排水音がお互いの迷惑にならず、親世帯と子世帯の生活時間が違っても安心です。

親世帯の住まい部分は、ウッドデッキにすぐに出られて洗濯物が干せたり、アイランドキッチンになっていたり、勝手口があったりと体への負担が少なく、老後も安心の設計になっています。

穏やかな気持ちで、二世帯がより快適に暮らせる完全分離型二世帯住宅ですね。

<参考:「平屋と2階建で分けた完全分離型二世帯住宅」の無垢の家 S様邸

15坪の狭小地に建てる完全分離二世帯住宅

東京23区内を中心に狭小・変形敷地にローコストで家を建てる建築会社のBLISS

完全分離二世帯住宅といえば広い土地が必要……と思いがちですが、敷地面積50.35m²(15.23坪)の狭小地に建てられた都市型の二世帯住宅です。

1階が親世帯、2階3階が子世帯。限られた敷地面積のため狭い空間ですが、生活動線に気を配った設計になっています。

外観はコンクリート打ちっ放しのスタイリッシュで頑丈なイメージで、インパクトがあります。

1階部分は、親が一人で住むスペース。シンプルですが収納やキッチンも十分な広さがあり、すっきり快適な空間に。暖色系の照明が温もりを感じさせ、上階に子世帯が住んでいるので1人でも安心感があります。

2階3階が子世帯の住居。2階部分にはLDKとトイレとバスルームがあり、部屋が広く感じられるように明るい色を採用し、狭小地でも狭さを感じさせません。

リビングには床暖房が設置され、冬でも快適で家族が自然に集まってくるのではないでしょうか。また、ガス乾燥機もあり家事の負担も軽減できます。

3階部分は、3つの窓で光が入りやすく明るい洋室に。カウンターもあるのでパソコン作業や事務仕事にも活躍します。

広い土地がなければ完全分離二世帯住宅は無理かも……と思うかもしれませんが、都心部の狭小地でも工夫しだいで二世帯が快適に暮らせる住居を建てることができるのです。

<参考:狭小地に建つ完全分離の二世帯住宅 狭小住宅の施工事例式会社 >

それぞれの好みとこだわりを実現!

名倉建設株式会社のココワホームが施工した二世帯住宅。

二世帯住宅の住まいは、住宅のテイストをどちらかの好みに合わせなければならず、一方が妥協しなければならないという悩みがありますよね。

しかし、こちらの例では完全分離型だからこそできる、それぞれの居住空間でテイストを変え、それぞれの好みに合わせた理想の家を実現しています。

ネイビーの外観が印象的で、格子が光と風をうまく取り入れ外観のアクセントに。シンプルながらもおしゃれで、高いデザイン性が目を引きます。

子世帯はLDKに小上がりの畳コーナーがあり、子どもが遊んだり、くつろいだりと家族の繋がりを意識した間取りです。

畳コーナーから繋がるフリースペースは、キッチンからも目が届くようになっており、家事をしながら子どもの宿題を見たり、在宅ワークの空間としても活用できます。

親世帯のLDKは木を使った明るく、開放感のある空間。和室との境目は段差もなくしているので、つまずく心配もありません。

親世帯、子世帯のプライバシーをしっかりと確保しながら、暮らしやすい工夫がふんだんに盛り込まれた、こだわりの完全分離型二世帯住宅になっています。

<参考: コラム 二世帯住宅施工事例、それぞれのカタチ >

完全分離型二世帯住宅なら、「スマートモデューロ」という選択肢も!

スマートモデューロ室内_家族

今住んでいる家もあるし、完全分離二世帯住宅を新しく建てるのはハードルが高い……という人もいるのではないでしょうか?

完全分離二世帯住宅は建設費用もかかり、一から家を建てるとなるとかなりの時間と労力を使います。

かといって、今の家に同居するのはプライバシーの問題もあるし、子世帯が同居するような広さの余裕もない……。

近くには住みたいけど、ストレスや不満を抱えながらでは快適な暮らしはできません。

それなら完全分離二世帯住宅ではありませんが、スマートモデューロで住まいの空間を増やすという選択肢を検討してみてはどうでしょうか?

スマートモデューロ(以下、スマモ)の魅力はなんといっても桁違いの快適性。

輸送コンテナと同じサイズなのでコンテナハウスと混同されがちですが、スマモはすべてが木材で作られた高性能な木造住宅。

細部までこだわり抜かれているので、高い耐久性や断熱性、気密性、遮音性、快適性があり、高級住宅に引けを取らない快適な居心地を実現しています。

大きさも3m、6m、12mの3サイズがあり、連結させて自由なレイアウトが可能です。もちろんキッチン、バス、トイレなど一般住宅と同じ設備を設置することも。

スマモは導入もかんたんで、家を建てるよりもスピーディに設置できます。

また、スマモは、購入のほかにレンタルでの利用も可能で、場所の移動も柔軟に対応でき、暮らしにあった方法を選ぶことができます。

スマモについてもっと詳しく知りたい人は、スマートモデューロの特徴やメリット、価格などを紹介したこちらの記事も参考にしてみてくださいね。

家族みんなで安心して暮らせる「完全分離型二世帯住宅」

両親と離れるのは不安なので一緒に住みたいけど、ただ一緒に暮らすだけだとお互いのプライバシーは守れません。

ひとつの住まいにずっと一緒に暮らすのは、家族とはいえやはり難しい面もありますよね。

完全分離型二世帯住宅なら、プライバシーをしっかり守りながら両親と同じ家で一緒に暮らせ、さまざまな悩みや不安を解消してくれるでしょう。

一生に一度の、大切な家族との住まいを検討している人には、ぜひこの完全分離型二世帯住宅のメリットやデメリットをしっかりと把握してもらいたいと思います。

家族にぴったりな暮らしの在り方として、完全分離型二世帯住宅をひとつの選択肢として検討してみてはどうでしょうか?